「リハビリ旅行」への思い

Ⅰ.リハビリ旅行について

――リハビリ旅行とはどのようなものですか?

リハビリ旅行を一言で例えるなら「生きることを真剣に考えるストーリー」なんです。リハビリ旅行で示す「旅行」とは参加者(患者/医療・福祉従事者)が目標を達成するための全過程のことで、障がいを抱え、生活環境が一変した参加者が再び前を向いて歩いていける過程の一つとしてリハビリ旅行があります。

――旅行をするだけではないんですね。

そうです。リハビリ旅行の特性は、‛‛自己実現を目標に旅行を手段として活動と参加を促す事’’であり、成功体験を通して自己効力感を向上させることなんです。

Ⅱ.リハビリ旅行プログラム

――その特性を引き出すために意識していることはありますか?

はい。「リハビリ旅行プログラム」というものがあります。特徴は、選択が参加者に委ねられ、その障害を乗り越えるための課題を療法士と一緒に検討します。参加者の思いが目標となり、参加者自身で考え、障害を乗り越えるために療法士は後押しをする。プログラムを終えた後には自信と達成感が得られるように振り返りを行う構成となっており、ご自宅に帰宅した後も自発的な活動性に繋がる人間作業モデルになっています。

Ⅲ.リハビリ旅行(前・中・後)

――なるほど。旅行後も重要なんですね。

そうなんです。リハビリ旅行には準備期間からフォローアップ期間までを通じた意味深い期間があるんです。旅行前については関係構築、意欲形成、事前リハビリなど複数の重要な過程。旅行中には安全面に配慮することは勿論のこと、「今回が最後の旅行になるかもしれない」という参加者や家族の思いを汲み、1日1日が感動体験になるよう演出家としての視点や、先読みし関係機関と連携を取りながら動くコーディネーターの視点でも動く必要があるんです。

旅行後はふりかえりや気づきに対するフォローアップを行うことで旅行直後の燃え尽き症候群を予防し、次の課題や自己実現に近づくとても重要な期間になります。

Ⅳ.リハビリ旅行に必要な3つの要素

――リハビリ旅行を行うにあたって必要なものはありますか?

リハビリ旅行を行う上で「意欲形成」「リスク管理」「まきこみ力」は兼ね備えておくべき必要な要素だと思います。

――それは具体的にはどのようなものですか?

「意欲形成」参加者と向き合う姿勢、いわゆる参加者との関係構築を表しています。参加者自らが自分の脚で歩んでいけるよう、それをサポートする医療職の関わり方であり、信頼関係は勿論のこと、参加者と対峙する医療者の真摯な姿勢が問われます。

「リスク管理」は医療的管理、医療的ケアや宿泊先の環境整備など、旅行中に起こりうるすべてがそれにあたり、参加者が安全にリハビリ旅行を行うための危機管理能力について問われています。

「まきこみ力」はプロジェクトを遂行するために必要な仲間づくり、組織内の協力、そして観光協会や旅行会社、福祉用具業者、保険会社などの各協力機関との関係構築を表しています。個人ができる能力には限界があり、協力体制を生み出すためには信頼関係なくしては成立ちません。

Ⅴ.リハビリ旅行の誕生から現在まで

――リハビリ旅行の実績についてお聞かせください。

2008年から開始したリハビリ旅行は2020年11月で35回を迎え、旅行の参加者は延べ120名余りにのぼります。リハビリ旅行には「リハビリ旅行発祥の地」静岡県伊豆稲取温泉と「リハビリ旅行発展の地」長野県昼神温泉というリハビリ旅行を語る上では欠かすことのできない2大温泉郷が存在します。

リハビリ旅行はもとより、様々な打ち合わせや交流を経て、ありがたいことに現在では温泉地全体で応援して下さる取り組みとなっています。このような取り組みが評価され、2018年10月にはヘルスツーリズムに認証されました。

Ⅵ.今後の展望について

――今後の展望についてお聞かせください。

近年、社会保障費が逼迫している現状は公的保険内サービスの限界を予期しており、ヘルスケア産業など保険外サービスの代替え案が模索されています。国としては生涯現役社会を実現するためには社会との繋がりを持ち続ける仕組みを必要とし、①身体・精神②価値観③選択肢④情報⑤人材の5点を課題としています。

リハビリ旅行は、①障がいを受け入れる(克服)する過程、②旅という価値、③④高齢・障がい者旅行、⑤人材育成という新たな選択肢となり、保険内・外の可能性になりうると考えています。

今後は、今だからこそ出来る「リハビリ旅行」の導入が責務であると考え、その一つが「精神特化型のリハビリ旅行」です。実現のためにはより多くのサポーターの皆様と共有させて頂きたいと考えています。